アトピー性皮膚炎とは、環境中のアレルゲンに対して過敏反応を示すことで痒みを生じる皮膚炎のことで、人間と犬では比較的病態が近いとされています。
一方で、猫においては“アトピー性皮膚炎”という診断名はあまり使われることはありません。
それは現時点において、猫がアトピー性皮膚炎を発症する原因や診断基準がはっきりと分かっていないためです。
それでもアトピーのように環境中のアレルゲンに対するアレルギー反応が原因と考えられる痒みおよび皮膚炎は猫でも存在するため、今回はそんな猫のアトピー“様”皮膚炎についてご紹介していきます。
<猫のアトピー性皮膚炎とは>
繰り返しになりますが、猫ではアトピー性皮膚炎という診断名をそのまま使うことはありません。
獣医学的な正式名称は、“猫の非ノミ非食物性アレルギー性皮膚炎”とされています。
なんだか難しい言葉ですよね。
しかし、猫におけるアトピー性皮膚炎を考える上ではこの難しいワードを分解して考えることが大切になります。
まずは、猫に強い痒みを生じる皮膚病を整理したいと思います。
・ノミアレルギー性皮膚炎
・食物アレルギー(=食物有害反応)
・昆虫刺咬アレルギー
・疥癬症
・ツメダニ症
・真菌感染症(いわゆるカビ) など
これらに加えて、皮膚におけるガン(=腫瘍)や膀胱炎等のお腹の中の異変によっても痒みが生じることがあります。
この中でとくに多くの猫の痒みの原因とされる、ノミアレルギーおよび食物アレルギーをまず除外することが優先されます。
何よりこれらの皮膚病は診断がやや難しく他の皮膚病と混同したり同時に存在することがあるため、獣医師は注意して診察を行ないます。
さらに加えて真菌症や疥癬、ツメダニなどの寄生虫による痒みを否定することで今回のテーマである猫の非ノミ非食物性アレルギー性皮膚炎という診断にたどり着くことができます。
<非ノミ非食物性アレルギー性皮膚炎の症状とは?>
猫のアトピー性皮膚炎とも言われるこの皮膚病は、何より痒みがメインの症状となります。
そのため痒みによって引き起こされる身体の変化に着目する必要があります。
・過剰にグルーミング(=毛づくろい)をしている
・舐め過ぎることで皮膚が荒れてしまっている(=舐め壊し)
・顔や首周りの皮膚を掻いている
・皮膚が赤くなったり赤いボツボツができる、皮膚が剥がれている、かさぶたになっている、毛が抜けている など
これらがこの皮膚病に伴う比較的多い症状になりますが、先ほど紹介した痒みを引き起こす猫の他の皮膚病においても同様の症状が見られることがあるため、注意しなければなりません。
<どのように治療するの?>
猫の非ノミ非食物性アレルギー性皮膚炎も基本的には環境中のアレルゲン物質に対する身体の過敏反応であるため、原因となるアレルゲンを避けることが重要と言えます。
理論上は、猫の血液中のIgE抗体を調べる検査により強く反応するアレルゲンを調べることができますが、実際はなかなか難しく疑わしいアレルゲンが検出できても日常生活で完全に回避できないことが多いです。
そのため治療としては痒みの原因となっているアレルギー反応をお薬によって抑えていくことが重要です。
・ステロイド製剤
・抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)
・シクロスポリン(免疫抑制薬) など
以上この3つが内科的治療の中心になります。
これらのお薬によって痒みをコントロールできないと、皮膚の搔き壊し・舐め壊しは持続し、さらに皮膚の状態は悪化してしまいます。
あまりにもひどく舐めてしまう場合には一時的に舐めることができなくするために、エリザベスカラーやウェアの装着をすることもあります。
<まとめ>
猫におけるアトピー性皮膚炎は正確には非ノミ非食物性アレルギー性皮膚炎と呼ばれますが、環境中のアレルゲンに対する痒みがきっかけになることは人や犬と同様です。
遺伝的な素因も疑われており、基本的には生涯付き合わなければならない病気です。
あまりにも毛づくろいが普段よりも長いと感じた時には毛を掻き分けて皮膚の状態を見てみましょう。
何か変化がある場合には早い段階で診療を受けることを推奨します。