甲状腺機能亢進症という病気をご存知でしょうか?
首のあたりに存在する甲状腺から出される甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで様々な症状を引き起こす病気のことですが、人ではバセドウ病という名前でも有名です。
そんな甲状腺機能亢進症は、8歳を超える猫で比較的よく発生するため、猫を飼っている方には是非とも知っておいてもらいたい病気になります。
<甲状腺ホルモンって?過剰に分泌されるとどんな変化が起きるの?>
甲状腺ホルモンは全身の代謝を促すホルモンであり、脳や胃腸管の活性化を促進したり体温を調節する作用を持っています。
バセドウ病もこのホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症の1つですが、人では比較的女性に多いとされます。
一方で、猫においてはとくにオス猫・メス猫関係なく発生することが報告されています。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると猫では以下のような変化が見られてきます。
・食欲はあるのに体重が減ってきた
・以前と比べて嘔吐や下痢が目立つ
・おしっこの量が増え、お水をよく飲む(=多飲多尿)
・脱毛が目立つようになった
・興奮しやすくよく鳴くようになった
・息が荒い など
このように過剰に分泌された甲状腺ホルモンが全身に作用し、様々な影響を及ぼします。
とくに、甲状腺ホルモンは代謝を促進するため、食餌量は今までと変わっていないにも関わらず食べたものを消費する力が活性化してしまい、だんだんと痩せてくることがあります。
また、中高齢になって性格が落ち着いてくる頃なのに、なんだか興奮しやすく吐き気やお腹を下すことも増えたりして見つかることも多いです。
診断は一般的には血液検査で行ないます。
採血をして血液中の甲状腺ホルモンを測定し、健康な猫の数値よりも高い結果が出ることで診断されます。
<甲状腺機能亢進症の治療は?>
甲状腺機能亢進症の治療は大きく分けて3つあります。
・食餌療法
・薬物療法
・外科手術
まず猫の甲状腺機能亢進症の治療には食餌療法が存在します。
甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素という成分が、適切に制限された専用の療法食を与えることで甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑えるという治療です。
この専用の療法食のみでもホルモン値や症状がコントロールできる場合には、お薬を飲ませたり手術を受ける必要はありません。
しかし、この療法食以外の食べ物は原則的に与えることができず、さらにこの療法食を好んで食べ続けてくれる猫が比較的少ないのが難点です。
次に2つ目の治療法で、多くの場合この薬物療法を行ないます。
人のバセドウ病でも使われるチアマゾールというお薬を猫に飲ませて治療します。
このお薬は、甲状腺ホルモンが体内で作られるのを抑える作用があり、分泌される量を減らすことで症状をコントロールしていきます。
薬物療法の注意点としては、強い副作用が比較的出やすいということが挙げられ、副作用のチェックを定期的に血液検査で実施しながら治療する必要があります。
最後に外科手術です。
甲状腺ホルモンを過剰に合成・分泌している甲状腺を外科的に摘出する治療です。
甲状腺機能亢進症の猫の多くが中高齢以上であり、他の病気を併発していることも少なくなく、外科手術に必要な全身麻酔がリスクとなる可能性があります。
また摘出後は体内のホルモンバランスが大きく変わることが予想されるため、手術後の管理も安定するまでの間大切になります。
<まとめ>
今回は8歳を超える猫に発生しやすい甲状腺機能亢進症という病気について解説させて頂きました。
早期治療を行なうことで寿命を縮めることなく生涯を全うできる可能性もある病気です。
症状が様々であり、一見すると年をとったことによる変化と思われがちなのですが、当てはまる症状があれば早い段階で動物病院を受診しましょう。