「猫のリンパ腫」
猫に発生しやすい腫瘍としてもっとも多く報告されているのが“リンパ腫”です。
リンパ腫とは、リンパ球と呼ばれる免疫に関わる血液細胞ががん細胞となってしまう腫瘍疾患で、高齢の猫だけではなく若い子でも見つかることがあります。
さらに猫のリンパ腫は身体の様々な部位に発生し、発生する場所によってその特徴や症状が大きく異なります。
今回はそんないろんなバリエーションがある猫のリンパ腫についてご紹介します。
<リンパ腫ができやすい年齢と発生する部位は?>
猫のリンパ腫は、2〜4歳と比較的若い頃に発生しやすいタイプとシニア期以降の高齢猫に発生しやすいタイプの2つに大きく分けることができます。
中でも若齢期に発生しやすいリンパ腫の多くが、猫白血病ウイルス(FeLV)の感染が関与しています。
近年では猫を外飼いする割合が減ったことやFeLV感染の有無を一般の動物病院で調べることができる検査キットが普及したことなどから、若い時期に発生するリンパ腫は減少傾向にあります。
しかし、保護猫や元ノラ猫を中心に今でも一定数存在するため注意が必要です。
・前縦隔型リンパ腫
胸の内側で、心臓よりも前側に発生するリンパ腫です。胸の中で大きくなったり胸水が溜まってしまうことで、呼吸がしづらくなったり食欲が無くなるなどの症状から見つかることが多いです。
・中枢神経型リンパ腫
脳や中枢神経にリンパ腫が発生するタイプで、麻痺やけいれん発作が主な症状として見られます。
・多中心型リンパ腫
肝臓や脾臓というお腹の中の内臓が腫れたり、様々な部位のリンパ節が腫れることで色々な症状が引き起こされるタイプです。
以上この3つのタイプが、FeLVに感染している若い猫に発生しやすいリンパ腫になります。
一方、中高齢以降に発生しやすいリンパ腫のタイプを次にご紹介します。
・消化器型リンパ腫
現在、中高齢の猫で最も多く見つかっているリンパ腫で、小腸・大腸や胃、さらには消化管と隣接するリンパ節に発生します。腫瘍により吐き気や下痢などの症状が引き起こされますが、これらの症状が数週間以上続いたケースでリンパ腫が見つかることが多いです。
・腎臓型リンパ腫
片側あるいは両方の腎臓が大きくなることで見つかるリンパ腫です。腫瘍細胞により腎臓の働きが妨害され、腎不全に伴う症状や血液検査の異常が引き起こされます。
・鼻腔内リンパ腫
鼻の中に腫瘍細胞が増えることで鼻出血や呼吸困難などが症状として引き起こされるタイプであり、病気が進行すると顔の形が変わってしまうことがあります。
・皮膚型リンパ腫
皮膚に発生するリンパ腫であり、腫瘍細胞によりしこりを作ることがありますが比較的珍しいタイプになります。
これら4つが主に高齢の猫に発生しやすいリンパ腫です。
いずれもリンパ腫の診断で重要になるのが、超音波検査やレントゲン撮影、MRI検査などの画像診断と、細胞診検査で腫瘍細胞を確認することです。
<リンパ腫の治療は?>
症状を引き起こしているリンパ腫が見つかった場合、基本的には早い段階で治療をしなければ助かりません。
以下の2つの治療法が猫のリンパ腫治療の基本となります。
・化学療法(抗がん剤治療)
・放射線療法
いずれの治療であっても、リンパ腫で認められるがん細胞を破壊していくことが目的になります。
ただ、がん細胞を完全に無くすことは一般的に困難であり、治療によりがん細胞を一時的に減らしてもいずれまた増えてしまうと症状が再発します。
そのため、リンパ腫の多くは完治できず症状が出ないようコントロールしながら付き合っていくことが目標となります。
<まとめ>
リンパ腫は猫で最も多く発生する腫瘍です。
さらに様々なタイプが存在し、発生する部位によって引き起こされる症状も異なるため注意が必要です。
また、腫瘍であるにも関わらず、高齢猫だけでなく若い頃でも発生する可能性があることはこれから猫を飼われる方に知って頂きたいと思います。