「猫の乳がん」
猫にも乳腺にしこりができることはみなさんご存知でしょうか?
さらに猫の場合、乳腺にできたしこりのうち80〜90%が悪性、つまり乳がんだと報告されており、十分に注意しなくてはいけない病気になります。
<猫の乳腺にしこり?どんな猫にできやすいの?>
乳腺にできたしこりのことを乳腺腫瘍と呼びます。
猫の乳腺腫瘍は、99%がメス猫に見つかり、様々な腫瘍の中でも3番目に多い腫瘍です。
さらに8〜9割の乳腺腫瘍は悪性であり、いわゆる乳がんであるため早期発見・早期治療が重要となります。
猫でもいわゆる女性ホルモンの存在が乳腺腫瘍のできやすさに影響しており、避妊手術を実施していない猫では避妊手術を行なっている猫と比べて7倍近く発生しやすいとされます。
また乳腺腫瘍の発生するリスクは避妊手術を行なうタイミングも大切です。
避妊手術のタイミングが生後6ヶ月以内の猫では90%以上、生後1年未満の猫では約85%、発生リスクが低下します。
そのため、出産予定の無い猫であれば早い段階で避妊手術をすることが望まれます。
見つかりやすい年齢として、一般的にシニア期に入ってからの10〜12歳前後と言われますが、中でもシャム猫ではより若い頃から発生しやすいと報告されています。
<猫の乳腺腫瘍はどんな風に広がるの?>
猫の乳腺腫瘍のほとんどは皮膚や皮下組織の中で比較的早いスピードで広がっていきます。
1ヶ所にとどまらず複数の乳腺に発生することが多いことにも注意しなければなりません。
また、乳腺の近くに存在するリンパ節へがん細胞が広がっていきやすいことも多くの乳腺腫瘍の猫で確認されています。
さらに悪性度が高く進行した乳腺腫瘍では、肺や胸の中のリンパ節に転移することがあり、適切な治療により乳腺腫瘍のコントロールが取れないケースでは、胸腔内へ転移したがん細胞の影響から呼吸が苦しくなったり胸の中に水(=胸水)が溜まることもあります。
<乳腺腫瘍の治療は?>
転移が認められていない時点での治療は、基本的には外科的な摘出手術になります。
しかし、猫で見つかる乳腺腫瘍のほとんどが悪性であり、摘出手術ではかなり広範囲に切除する必要が生じてしまいます。
猫の乳腺は一般的に左右4対、すなわち8つ存在しますが、小さい単体のしこりのみ見つけた場合でも、左右どちらかの乳腺全て(=片側4つ)を切除することが最低でも推奨されます。
また乳腺腫瘍が左右で見つかったケースでは、両側全ての乳腺切除を行なうことが多く報告されます。
猫の乳腺腫瘍に対して抗がん剤が使用されることもあります。
しかし、抗がん剤による治療は、次に挙げるようなケースに限られます。
・すでに肺などへの転移が認められている
・全身麻酔に伴うリスクが高く外科手術が難しい、実施できない
・そもそも飼い主が手術を望まない など
以上のように、原則的には外科手術が適応とならない場合に抗がん剤による治療が選ばれます。
ただし人間同様、抗がん剤による治療は副作用を伴う上、猫の乳腺腫瘍に対しては根本的な治療とはなりません。
抗がん剤ではがん細胞を減らすことはできても完全に無くすことは難しいです。
だからこそ、早期治療はもちろんですが、治療法についてもしっかりと担当の獣医師と相談して治療を選択する必要があります。
<まとめ>
猫の乳腺腫瘍はほとんどがメス猫に発生する悪性腫瘍です。
その上重要なのは、早い段階で避妊手術をすることでその発生の多くを避けることができるといいうことです。 子猫を飼おうとしている方は、今後出産させる予定がない場合には、1歳になるまでに避妊手術を受けさせることも考えてあげましょう。