猫の世界でも高齢化が進んでいるのは今となっては有名なことではありますが、長く元気に生きてもらうためには健康な歯をいつまでも保つことが大切になります。
今回はそんな歯やお口の中の病気についてご紹介します。
<もっとも多い歯の病気は歯周病!>
猫は爪とぎはしますが、自分の歯の健康管理はあまりしないことでしょう。
かといって、犬と比べてもなかなか歯みがきはさせてくれない子が多いと思います。
猫のお口の中では、むし歯菌よりも歯周病菌の方が増えやすいため、人と違って虫歯にはなりにくいものの、3〜5歳を越えると多くの猫が歯周病にかかると言われます。
ご飯を食べた後、歯の表面にはすぐに歯垢が付着します。
この歯垢は食べ物の残りカスだけではなく、お口の中の細菌(いわゆる歯周病菌)、白血球・マクロファージ、脂質、唾液中のタンパク質などが混ざりあって構成されます。
これらの塊がだんだんと大きくなってくると、歯の付け根と接する歯肉に炎症が広がっていきます。
それと同時に歯垢は歯石となり、歯や歯肉とがっちりくっついてしまい、スケーリングという超音波器具を用いた処置を行わないと除去できなくなるのです。
歯石が形成される頃には炎症はさらに歯肉中の深いところまで到達します。
すると歯槽骨という歯を支える顎の骨にまで炎症が広がり、最終的には歯槽骨を溶かすことで支えが無くなった歯は抜け落ちてしまうのです。
歯が抜け落ちるまで、歯周病による痛みや違和感は続きます。
その痛みや違和感が強い場合には、食欲が無くなってしまったりご飯がうまく噛めずに口をひたすらくちゃくちゃしていることが症状として見られます。
また、もう1つ多く認められる症状として口臭があります。
特に歯石が形成されるほど歯周病菌が増殖しているお口の環境ではより強い口臭が認められるようになります。
<猫の歯肉口内炎とは?>
次に、歯周病以外に注意したい猫のお口の中の病気として、歯肉口内炎を挙げたいと思います。
歯肉口内炎とは後臼歯と呼ばれる奥歯の周りからさらにその奥の粘膜にかけて真っ赤に腫れ上がり、強い痛みを伴うため歯周病同様にご飯が普段通り食べられなくなってしまう病気になります。
原因はお口の中の歯周病菌をはじめとする細菌の存在やウイルス感染症、免疫異常などが考えられていますが、現時点では確定されていません。
ただ、猫白血病ウイルスや猫エイズウイルスに感染している猫で症状が強い傾向にあります。
<予防や治療はどうしたらいいの?>
お口の病気を予防するには日々のデンタルケアが大切になります。
しかし、慣れていない猫の口を開けていきなり歯みがきをしようとすると強いストレスを与えてしまいます。
そのため、出来るだけ幼い頃からお口を開ける練習と、歯ブラシや歯みがきシートなどを当てることに慣らしてあげましょう。
ご飯が食べられないほどの痛みを伴うくらい進行した歯周病や歯肉口内炎の場合、原則的には抜歯が治療の第一選択になります。
歯周病菌などが増える原因となっている歯を抜いてあげることが、ほとんどのケースで唯一のかつ根本的な治療となるのです。
一般的なキャットフードであればドライフード・ウェットフードに関わらず、たとえ歯がなくても粒を丸呑みすることで食べることができます。
そのため、抜歯をするとご飯が食べられなくなるということはありませんのでご安心ください。
しかし、健康的に長生きさせてあげる上で猫にとっても人と同じように歯の存在は大切だと言えます。
<まとめ>
高齢化が進んでいる猫にとって健康な歯の存在は貴重なものです。
しかし、お口の中の病気によって痛みや違和感からご飯が食べられなくなってしまうと、高齢の猫はすぐに弱ってしまいます。 抜歯をされても痛みが無くなることでご飯は食べられるようになりますが、できることなら健康な歯を保ったまま生涯過ごさせてあげたいものですね。