1つめの手紙「出会い編」
にゃんこから10の手紙とは?
注釈:にゃんこが呼ぶ主さん = ぬしさん
あったかくて、フワフワで、とっても気持ちの良い毛布の上にボクを置いて、それからボクにミルクをくれて、ボクを優しく撫でてくれて…それから何度もボクに向かって同じ言葉を繰り返してきて…これが、ボクの初めての記憶。
その言葉を聞いて、あれ、これがボクの名前なのかなって思ったんだ。
今までは、寒くて不安で怖くて、それにお腹も空いて、これからどうなっちゃうんだろって気持ちで震えてた。
でも、誰かがボクを拾い上げて、寒くない場所に連れて行ってくれた。
そこでしばらく暮らしたけれど、ボクはまた別の人に連れられて、違う場所に運ばれた。
みんな優しくしてくれたし、ごはんもちゃんとくれたし、温かくしてくれたけど、でも、どこに行っても少し経つと違う人に違う場所に連れて行かれて、なんだか落ち着かない気分だったんだ。
だけど、ボクに名前をつけてくれた主さんは、ボクを違う人の手に渡したり、違う場所へ連れて行ったりしなかったね。
何日寝ても、目が覚めたらいつも同じ場所で、見慣れた主さんの笑顔がいつもボクを覗き込んで、よく知った手でボクを撫でてくれて、ボクは初めて自分の「居場所」を見つけたんだよ。
最初は、またいつ他の場所へ連れて行かれるんじゃないかと思って、この人ともあんまり仲良くなっちゃダメだって自分に言い聞かせてた。
だってさ、仲良くなっちゃったらお別れする時に寂しくなるでしょ?
だから、すぐにお別れしても寂しくないように、ボクはあんまり仲良くしないようにしていたんだよ。
でも、主さんは毎日毎日ボクを撫でて、ボクにごはんをくれて、ボクと一緒に寝そべって過ごしてくれたよね。
ある時主さんがネコジャラシのおもちゃを買ってきてくれた時、ついにボクは心を開いてしまったんだ。ボクがネコジャラシに飛びついた時に見せてくれた主さんの笑顔が忘れられないよ。こんなに喜んでくれるなら、もっともっと遊ぼう!って思って、ボクはとてもはしゃいじゃったね。
それからもボクは別の場所に移されなかったから、ああ、ここがボクのおうちになったんだ、ってほっとしたんだ。
主さんがおでかけする時はちょっぴり寂しいけど、帰ってきた後は真っ先にボクのもとへ来てくれるから、それで良いんだ。ボクの名前を呼んで、それから撫でてくれる主さんの顔が見られれば、それだけでボクは幸せなんだもん。
ずっとずっと一緒にいてくれるよね?
これからも、よろしくね。大好きだよ。