人で脂肪肝と聞くと、中年の方が食べ過ぎやアルコールの飲み過ぎ、運動不足などにより余った糖質や脂質が中性脂肪に変わり、肝臓に蓄積される病態をイメージすると思います。

そのため、なんとなく不摂生によるものでダイエットをすれば治ると思われがちですが、猫における脂肪肝は少々異なります。

とくに猫の脂肪肝は、適切な治療を早いタイミングで受けられないと亡くなってしまう可能性がある危険な病気なのです。

<猫の脂肪肝とは?>

脂肪肝と呼ばれる病態は、正式には肝リピドーシスと呼ばれています。

人の脂肪肝とは少しその原因が異なり、猫の肝リピドーシスの場合はなんらかの病気や理由から食欲不振に陥り、摂取される栄養が足りなくなることがきっかけになります。

栄養不足状態の猫の体内では、蓄えられていた脂肪が栄養に変換されるのですが、その際に生まれる脂肪酸を肝臓が代謝しきれず蓄積することで肝リピドーシスは発症します。

もともと脂肪を多く溜め込んでいる猫で発症しやすいため、現在肥満体型の猫は元気があるうちにダイエットをさせておきましょう。

しかし注意しておきたいのは、痩せている猫であってもご飯がほとんど食べられない期間が数日続くとこの肝リピドーシスになることがあるため、太っていないから無関係というわけではありません。

肝リピドーシスの猫では、食欲不振に加えて白目や口の中の粘膜が黄色く見える黄疸を認めたため動物病院を受診し見つかることが多いです。

とくに厄介なのは、食欲不振になる原因は別の病気からくることがほとんどですので、肝臓の治療と同時に食欲不振の原因となった病気も並行して治療していく必要があります。

<どんな治療を実施していくの?>

肝リピドーシスの治療で最も大切なのは、タンパク質が中心となる栄養摂取を継続していくことです。

肝リピドーシスの猫の多くが食欲不振の状態であり、自分から食べようとしない子がほとんどです。

そのため治療の初期では強制的にお口から給餌していきますが、うまく飲んでくれなかったり性格的にお口から食べさせることが難しい子では、鼻の穴からカテーテルを設置してそこから給餌します。

また、鼻の穴から設置したカテーテルでは管が比較的細いため、流動食のような種類のご飯に限られ、一度に摂取できる給餌量にも限界があります。

そこで全身麻酔が必要になってはしまいますが、食道や胃に直接チューブを設置できると給餌に関しては与えられる療法食の幅も広がり、格段に管理がしやすくなります。

さらに大きな利点として食道あるいは胃瘻チューブであれば、あらかじめ獣医師や動物看護師に管理の方法を教わることで飼い主自身がご自宅で給餌を行うこともできます。

したがって、動物病院という猫が慣れない環境下での入院期間を短くしてあげることが可能となります。

<まとめ>

肝リピドーシスは治療が遅れたりうまくいかないと亡くなってしまう可能性がある恐ろしい病気です。

肥満体型でなくても発症する可能性はありますが、蓄えられている脂肪の量が多いほど肝リピドーシスには陥りやすいため、太っている子は元気なうちにダイエットさせておきましょう。

適切な体型を保つことで、なんらかの理由で食欲が低下しても肝リピドーシスを一緒に発症する可能性を減らしてあげることができます。

また、もし肝リピドーシスと診断された場合は、ご家族の皆さんも含めて根気強く治療にあたる必要があります。

とくに給餌の管理がご自宅でできる方法もあるため、猫の入院に伴うストレスを最小限にする上で食道や胃瘻チューブの一時的な設置も考えておくといいでしょう。

  

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